新築における体制の話

私がこの仕事を本格的に始める前の話だが、木造の長屋を新築する際の階段図面に問題があり、上階の天井と階段の踏面の間の高さを130センチほどしか取れていないことが発覚した案件があった。当時は、何故こんな設計で建築確認が通るのか不思議だったし、何故施工が不具合を指摘しないのかも不思議だったが、今なら理由は分かる。まず、建築確認では建築関連法規に関連したチェックしか行わないので、住まいとして質的に成り立っているかどうかは指摘の範囲にならない。そして、その案件の建主はコスト削減のために設計と施工を分離発注していたのだが、建主は設計費を叩き過ぎていたため、設計から現場監理が除かれていた。加えて、施工にも敢えて建主と設計に不具合を指摘する理由が無かった。不具合を指摘して工事のやり直しが発生したり工期が伸びると、相見積で削られた施工費から確保した少ない利益が更に小さくなってしまうからだ。こうして、問題のある階段図面のまま施工が行われ、建主の実地検分によって問題が発覚した際には、階段のやり直し工事で1000万円以上の追加費用が必要な状況になっていた。広さだけでなく高さも変数となる階段設計は、確かに難易度が高い。とはいえ、建主/設計/施工がワンチームで協力できる体制が構築されていたならば、誰かが問題に対して早期に声を上げ、このような事態は起こらなかっただろう。この記事を読んだ貴方には、私が新築企画代行で体制最適化をメニューに加えている理由を、お分かりいただけたと思う。

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